白と黒のコーヒータイム
なのになかなか手から離れてくれないのが感情の厄介なところだ。

いま国見は完全に恋愛迷路に翻弄されている。

相手が見つからない訳じゃない、長続きしないだけ。

努力して男受けしそうな自分を偽って、いつかそれが本物になるかもと淡い期待を抱いて懸命に繕って。

そしていつも終わりは相手から告げられている。

「それってつまり…見てられないって事なんだろうな。」

痛々しくも長く関係を続けようとする国見を見て深く関わるまいと早々に手を引いていくのだ。

小さなため息を吐いて、うまく利用されないだけマシなのかもしれないと前向きに考えてみた。

何気無く捲った次のページは男性心理についてのもので、アンケートをとったのか様々な意見が載せられている。

「自分に必死で合わせようとしてくれるのは可愛いけど、そう思うのは最初だけ。結婚願望が強いのかと引いてしまう。26歳/接客業」

思わず読み上げてしまった意見にギクリとした。

まるで自分のことを言われているみたい。

「そういや名村も似たようなこと言ってたっけ。」

“国見って結婚願望強そうだよな。”

そうでも無いと自分では思っていたけど本当は結婚がしたくてたまらないのだろうか、自分でも分からなくなってきた。

安定した恋愛を求めていたけどそれは名村の言うように結婚を求めていたという事なのだろうか。

だとすればかなり前から願望があったということになる。

「あーーーー。」

自分で自分が信じられなくなって頭を抱えて唸った。

< 28 / 54 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop