マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
4 その先へ
あっ。嬉しくなって思わず、声をかけようとした。


「奏ちゃ…」


途中でやめてしまったのは、近づいて見ればそれまで自販機の影に隠れていた人が見えたからだった。


…あれは中野さんだ。


二人は飲み物を片手に楽しそうに話していた。
…ああいう奏ちゃんの笑顔って見た事あったっけ?
そうだよな、僕に向けられるのは苦笑いばっかだと思う。


はああ。
その場から隠れるようにして離れた。


…凄くお似合いだった。
中野さん、いくつだっけ?28、9位?
奏ちゃんは院を卒業してるから、25の年か。


中野さんは仕事も出来るし、ポンコツの僕には
勝ち目がない。


切ない気持ちと、自虐的な考えしか浮かんでこず、すごすごと来た廊下を戻った。
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