六周年記念小説
新入居者は教師三人です⁉
数日前、叔父さんから
新しい人が三人入るからと
言われ、了承したけど、
まさか、新しい入居者が
先生達とは知らなかった……

********************************

私が夕飯の準備をしていると
共同玄関から聞き覚えのある声が……

火を止めて、廊下を覗くと
そこには、理科の荷内先生。
国語の神宮司先生、
数学の露崎先生がいた。

「早美さん!?」

最初に目があったのは荷内先生。

『こんばんはというかおかえりなさい』

私服にエプロン、手にはお玉と
料理の真っ最中という出で立ちの私。

『先生達、ご飯は?』

「いや、まだだけど……」

じゃぁ、丁度いいか。

『でしたら、一緒にどうですか?』

後ろにいる二人にも聞こえるように
提案してみた。

「いいんですか?」

荷内先生が訊いてきたから
笑顔で了承した。

『はい』

着替えて来た三人に
座るよう促し、その間に
料理をテーブルに並べ、
ご飯とお味噌汁を置いた。

「早美さんは何時から一人暮らしを?」

露崎先生から質問された。

『去年、高校に入った時に
母に仕送りはしてあげるから
一人で暮らしなさいと言われて
叔父が管理人をしている
此所に来たんです』

なんか変な感じだ。

学校で話している先生三人が
同じ家のリビングにいるなんて……

「そう何ですか」

荷内先生が厚焼き玉子に
箸をつけながら相槌を打ってくれた。

『味、どうですか?』

先生達の口に合っているだろうか?

「悪くねぇよ」

ずっと黙っていた
神宮司先生が口を開いた。

『お二人は?』

気になって訊いてみた。

「美味しいですよ」

「二人と同じだ」

よかった。

**食後**

「梓、それ禁止」

げんなりしたように
言ったのは神宮司先生だ。

呼び捨てにされた。

まぁ、いいけど……

〈それ〉とは?

首を傾げる。

「敬語と呼び方」

「それには俺も賛成だ」

普段、厳しい露崎先生まで言い出した。

荷内先生の方を見ると
無言で同意してるようだった。

『分かった』

とりあえずタメ語で話す

こっちの方が話しやすいしね。

敬語とか疲れるし。

『でも、なんて呼べばいいの?』

「全員、下の名前で
呼び捨てでいいじゃねぇか」

三人に呼び捨てにされるのは
構わないけど、
私が呼び捨てにするのは
少々気が引ける。

『三人を呼び捨ては無理だよ』

学校で呼んじゃうとかじゃなく
単に年上の彼らを呼び捨てに
できない気がするだけだけど……

「梓、“雫”って呼んでごらん」

本人がいいと言ってるし、
意を決して呼んでみよう。

『雫?』

疑問系になったのは許してほしい。

「よく言えたね。
他の二人も呼んでやって」

露崎先生改め、雫に言われ
二人も呼んでみる。

『泰佑、勇人』

ぎこちなくだけど、名前で呼べた。

「よし❢❢
此所に帰ってきたら俺達はダチだ」

勇人の言葉が嬉しかった。

『うん❢❢』

呼び方が決まり、その後は
色んな話しをした。

『え!? じゃぁ、
泰佑が住んでたアパートが
火事になったから此所に来たの?』

三人の仲がいいのは
校内でも有名だった。

「そうなんですよ」

放火だったらしく、犯人は
まだ見つかってないらしい。

『怪我しなかった?』

「ええ、放火されたのは
昼間でしたから私を含め、
アパートの住人は誰一人怪我してません」

よかった……

『災難だったね。
だけど、何で二人まで引越して来たの?』

泰佑が引越して来た理由は分かった。

「俺は弟がしょっちゅう
彼女連れ込むから面倒になって
引越して来たんだよ。
うちは弟と二人だからな」

勇人は面倒って言ったけど
きっと優しいお兄ちゃんなんだろうなぁ。

『そうなんだ♪ で、雫は?』

「俺は弟が結婚するから。
実家には姉夫婦もいるし、
手狭になるんで引越して来た」

流石に三人で同じ所になるとは
予想外だったみたいだけど。
< 3 / 12 >

この作品をシェア

pagetop