もう愛情を求めない
谷口家
「綾ちゃん、これからよろしくね」


4歳まで遡ると、ここが最悪な人生の幕開けのような気がする。



施設でいつものように一人でいると、突然知らないおばさんが私に声をかける。


4歳だった私は、うっすらと覚えている。


この人が私の里親になってくれる母親。


父親は車で待機しているようだ。



「……母さんは? 綾の父さんは?」



いつもやる気のない施設のおじさんに訊く。


私は今でも母さんと、父さんを待っているのだ。



心機一転してほしいと思っているおじさんは、私と目線を合わせて言う。



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