キスは目覚めの5秒後に
きっと誰よりも

「おはようございます」


雑貨メーカーの企画デザイン課。

二週間ぶりの出勤で少し緊張しつつ入ると、みんながすごく驚いた表情をした。

後輩の女子社員なんて、ふたりで寄りそってヒソヒソ何かを話している。

よく見れば男子社員も同じ様にしている。

まあ、こういう反応される覚悟はしていたけど、これほどとは思わなかった。


「係長、長期休暇ご迷惑をおかけしました」

「あ?ああ、無事で何よりだ。今日からまた頑張って仕事してくれ」

「はい。ありがとうございます」


無事で何より?

係長の様子が少しおどおどしていて変だし、言葉の意味が分からない。

私がスウェーデンでバッグを盗まれたことは誰も知らない筈だけど・・・?

首を捻りつつも自席に座ってパソコンを立ち上げていると、私の同期社員である礒野奈帆がいそいそと近付いてきた。


「美也子、二週間何やってたの?携帯にメールしても戻って来ちゃうし、すっごく心配してたのよ?」

「あ、ゴメン。メールしてくれていたんだ。実は、向こうで携帯失くしちゃったのよ」

「そうなんだ。それ知らないからこっちで噂になったのよ。ひょっとしたら“生きていないかも”って」

「えええ!?何よそれ!」


あまりの驚きで大きな声を出すと、奈帆は慌てて唇に人差し指を当てた。


「しー、美也子、声大きいよ。ただでさえ注目浴びてるんだから」

「ゴメン。ね、それ、どういうこと?」

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