危険な愛を抱きしめて

_(5)

 



 どうして、この時。

 目が覚めてしまったんだろう。

 夜中、ぐっすり眠れるようにと、医者から睡眠薬を手渡されたのに。

 夕方、町谷が着替えと一緒に持ってきた、バラの香りに誘われるように。

 また、病室から差し込む蒼い月に照らされて。

 朝まで開かないはずだったオレの目が、開いた。






 ……目覚めた……



「……水……」



 咽が、とても渇いていた。

 電気もつけずに、ペットボトルのありかを探っていると、かすかな音が聞こえたような気がして首をかしげた。

 夜中、看護師や、医師が起きているナース・ステーションのある廊下側ではない。

 ……庭のほうから聞こえる。






 ……かすかな。


 たぶん。


 歌声が。




 
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