腹黒王子に秘密を握られました
 

そうやってひとり静かに滾っていると、こちらを振り返った金子と目があった。

「莉央」

声は出さず口元だけ動かして私の名前を呼び、おいでというように微かに目を細める。

ホントこいつは、なにをやっても絵になるやつだな。
そう思いながら自販機の前にいる金子と柴崎くんに近づく。

「あ、友野さんコーヒー飲みます?」

私に気づいた柴崎くんが、飲みかけのブラックコーヒーの缶をこちらに差し出してくる。

「こら、お前が自分でブラックがいいって言ったんだから、ちゃんと飲めよ」

苦笑いしながらコツンと柴崎くんの頭を叩く金子。

「はぁい」

顔をしかめながら苦いのを我慢してコーヒーを飲む柴崎くん。
小さな缶を両手で持って、こくんこくん飲むしぐさがあざとかわいい!

思わず柴崎くんを凝視していると、金子の手が私の髪にそっと触れた。

「莉央もなんか飲む?」

長い指で私の髪に梳くように触れながら、そう聞いてくる。

「あ、いいです、ありがとうございます」

慌てて首を横に振ると、本当にいいのか? というように金子が私の顔を覗きこむ。

「ほんと、この光景だけでお腹いっぱいというか、ごちそうさまですというか……」

「なに言ってんだ?」

「金子さーん! 俺ちゃんと飲みましたよー。ほめてほめて!」

「はいはい。エライエライ」

空になった缶コーヒーを持って報告する柴崎くんと、呆れながら頭をなでてやる金子。
あー。もうほんと、眼福だわ。


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