腹黒王子に秘密を握られました
 

こんな隠れ家的なおしゃれなカフェにさらっと連れてくる柴崎くんは、デート慣れしてるんだろうなぁ。

「友野さん、あとでその辺のお店ぶらぶら見てもいいですか? 俺秋物のブーツ欲しいんですよね」

「あ、うん……」

まじか。
こんなオシャレタウンで買い物しちゃうのか。

このカフェでランチを食べるだけでいっぱいいっぱいなのに、お店をぶらぶらとかハードルが高すぎる!
普段は友達の花乃に、シンプルで着回しが出来て無難な服をみつくろって! と頼んで季節ごとにまとめ買いをするだけだから、買い物自体を楽しいと思ったことはない。

むしろ義務というか苦行でしかなくて、できればおしゃれなお店なんかに近づきたくない。

だって、店員さんに話しかけられるのが苦手なんだよ!
足元から頭のてっぺんまで値踏みされて、こいつだせぇなとか思われてるんじゃないかって、オタクだってことがばれるんじゃないかって、不安でしかたないんだよ!
腐ったオタクが場違いな場所に足を踏み込んですいません! って叫びながら逃げ出したくなるんだよ!



もう帰りたい。

でも、そんなことを言ったら、また会社の人にオタクだってばらすぞとか言われるんだろうな。

どんどん憂鬱になりながら、メイソンジャーとかいうガラスの瓶に入ったおしゃれドリンクのストローをがじがじと齧り、ちらりと横に座る柴崎くんを盗み見る。


 
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