□第二章 社内のうわさ


 
朝、出勤のためにバスにゆられる十五分間。私にとってその時間は、物思いにふける大切なひととき。


ぼんやりと窓の外を眺めていると、二人乗りで自転車に乗る男子高校生をバスが追い越していくのが見えた。
私は慌てて身を乗り出し、その自転車を振り返る。

道路脇に落ちた黄色いイチョウの葉を、細い車輪で巻き上げながら走る自転車。
ふざけてわざと落ち葉を踏もうとハンドルを切る茶髪の男の子と、自転車の揺れに驚いて必死に肩にしがみつく黒髪の男の子。

ふぉぉぉぉ。
なんて素敵なシチュエーションっ。

二人の無邪気な笑顔に、私の血圧は急上昇。

ハンドルを握る男の子、好きなアニメのキャラにちょっと似てる。そう思った途端、私の妄想のスイッチがオンになる。


きっと二人は高校三年生。春になればお互い違う進路を選び、離れ離れになってしまうんだ。
彼と離れたくないと思うその寂しさの理由はただの友情なのか、それとももっと違うなにかなのか。
確かめたくてもそんな勇気はなくて、自分の胸の内に思いを秘めたまま、今日も親友のふりをして無理やりに笑顔をつくる。
ぎゅっと掴まった肩の温かさを、決して忘れないように胸に刻みつけながら……。


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