Engage Blues

諸々の事情を全てごまかしましょうッ!











 ますます追い返しにくい状態になった。
 かといって戦うわけにもいかないし……


 うだうだと悩んでる間に、キィッと扉の開く音がした。
 もちろん、背後で。


「梨花?」


 あ。まずい。
 振り向くと、不思議そうな顔した慶さんと目があった。
 制服と思しき白いシャツとエプロン姿。
 背が高いだけによく似合ってるなぁ。


「どうしたんだ。そんな所で」


 うっかり見惚れてる場合じゃない。
 何か、うまい言い訳を考えなくては。

 というか、何故すぐ思い至らないのか。
 地面を陥没させるほどの音と地震に気付かないはずないだろうッ。


 混乱状態の頭で必死に取り繕うことを考えていると、歩み寄ってきた慶さんは美由紀に気付いた。


「友達?」

「えぇっ、とぉ……その、幼馴染み?」


 素直に「はい」と頷けばいいものを。
 訂正し直した単語がまずかった。

 慶さんは、わたしと縁深い人物だと勘違いしたらしい。
 美由紀と真正面に向き合うなり、柔らかに微笑んだ。





< 80 / 141 >

この作品をシェア

pagetop