「まあこんなもんだろ」


ふんぞり返った国島さんに殺意を感じつつ、許可が降りたので鞄に荷物をつめる。

現在九時半。
この時間でも残っている社員が私達だけじゃないことにゾッとする。

社畜になるとこの時間でも平気なのね。
私はこうはなりたくないよ。


「ではお先に失礼します」

「まあ待て。お先じゃねーよ、俺も帰る」

「はあ、そうですか」

「はあじゃねーよ、駅まで一緒に行こう」

「はぁ?」


なんで。
絶対やだ。どうして会社の緊張を延長させなければならないの。


「あ、ギリ間に合ったから冷蔵庫のヨーグルト持って行っていいぞ」

「あっ、それはありがとうございます!」


逃げようとした背中に言われ、すぐに踵を返す私。
給湯室の冷蔵庫を開けたら、コンビニ袋にマジックで『川野の』と書いてあった。

なんだかくすぐったいような気分で、給湯室で一人ほくそ笑む。

……国島さんたら、ちゃんと私にくれるつもりだったんじゃない。

袋を開けると、キリリとしまった御影石くんの顔。

ああああー、格好いい。
あなたは私の癒やしですー。

すっかりご機嫌になり、ステップを踏みながら戻ると、三次元の振られ男が薄ら笑いを浮かべて待っていた。


「すんげぇ顔してるなぁ。そんな好きなんだ?」

「え? すごい顔ってなんですか」

「にやけてるぞ。食い意地張ってるな」


ああ、ヨーグルトのことか。

違うよ、私が愛してるのは御影石くんだもんね!
でも、会社ではオタクを封印しているので黙っておく。