吸血鬼、頑張ります。



扉の内側から少女の声が聞こえたのは、聞き間違えではなかった。


−ち、ちょっと待て下さい−


「お、王様。中から女の子の声が聞こえますが・・・」

香織は鉄観音を見る。


「あ〜あ〜あ〜っ、何も聞こえない!何も聞こえない!」


鉄観音は耳を塞いで一点を見つめて叫んでいた。

「ちょ、ちょっと王様!しっかりなさってください!!」


香織は鉄観音の頭を殴る。


「うがぁっ、い、痛っ!!!」

「はっ、俺は一体・・・」


鉄観音は正気に戻った。

「はっ、俺は一体・・・。じゃ、ないですよ!吸血鬼なんですから、幽霊とかっていちいち驚かないで下さい!」


「そ、そんな事言っても怖いものは怖いんだよ〜」


「もう、分かりましたから。早く中にいる人と話をして下さい」


「え〜、喋るの〜・・・」


鉄観音は立ち上がり渋々扉の前に立つ。


コンコン。


「すいませ〜ん・・・。だ、誰かいらっしゃいますか・・・」



−あ、もしやその声はハルシュバーン様では?−

突然、部屋の中から鉄観音に問い掛けてきた。


「は、ハルシュバーン?俺は、鉄観音ですけど・・・」


−いえ、間違いは在りません。あなたはハルシュバーン公爵様です−



「ハルシュバーン、公爵!?」


鉄観音はビックリした。
< 36 / 138 >

この作品をシェア

pagetop