気になるパラドクス

5

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忙しかった月末も乗り越え、街中がクリスマス色に変わり始める11月。

コートにマフラーは必須になって、ウキウキとショッピングを楽しむ人も増えていく。

だから、私たちも休日にショッピングに行くことになって、待ち合わせをしていると、通りすぎる人にじろじろと見られてうつむく。

「お待たせー」

声がしてパッと振り返り、視界に誰もいなくて見下ろした。

「あんたそれ、毎回会う度にやめてくれない?」

身長146センチの美波が、可愛らしい顔を思いきりしかめて私を睨み付けているから、微かに愛想笑いを浮かべる。

「久しぶりだったもんだから。最近はまわりに高い人ばかりだし」

「ああ。噂になってるのはフロッグすてっぷのデザイナー? 帰国してすぐに教えてもらったよ」

「どうでもいいけど久しぶり~。元気してた?」

美波は肩を竦めて、それからにっこりと微笑んだ。

くりっくりの大きな瞳、まっすぐストレートの髪はきっちりとパッチリボブに切られているけれど、柔らかそうなピンクの頬にサラサラとかかっていて可愛らしい。

「美波に会うと癒されるー」

「……私の顔を癒しにしないでくれないかな? ムカつくから」

微笑みながら言われて、頭をかいた。

美波とは同期で友達。

見た目に寄らず可愛いもの好きの私と、見た目に寄らずクールな美波は、研修を受けたときから仲良くなった。

「今日の美波は、彼氏のプレゼント選び?」

「そんなもんはとっくに別れたから。毎日の電話攻撃にうんざり」

うーん……美波のいる輸入チームはいつでも忙しいから。それを理解してくれる人じゃないと難しいかもね。

「じゃ、何を買う~?」

「いつも買い物楽しんでいるのはあんたでしょ?」

相変わらず美波はクールだ。

「うーん……何を買うかな~」

「いつものとこでいいじゃない。フロッグすてっぷでしょ?」

「えーと……うーん」

フロッグすてっぷとの企画はもうミーティングの段階ではなくて、販促と営業展開の段階に入ってきている。

ちょくちょく営業部へ顔を出す黒埼さんに構われそうになると、私はそそくさ逃げ回っているからなぁ。

まぁ、店舗にいるとは思えないけど、たまに店舗に顔を出すらしいから。

……いたらどうしようかなーって思っちゃって。

「ネ、ネットでも買えるし!」

「実物みたいんじゃないの?」

「それは見たい!」

「じゃあ行くよ」

美波はスタスタ歩き始めていて、溜め息交じりについていった。
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