空蝉

1



カイジは洗面台の前で歯を磨きながら、鏡に映る、目つきの悪い男の顔に、朝からげんなりとさせられた。




性格の悪さが滲み出てんだよなぁ。

いや、実際、俺、性格悪いけど。


俺が他人なら、絶対、こんな目つきのやつと知り合いになりたくねぇよ。



自分の顔を見る度に、カイジは毎度のことながら、嫌な気分になってしまう。





カイジにはふたりの親友がいる。


翔と、ヨシキ。

共に中学1年からの腐れ縁だ。




翔は身勝手に振る舞いながらも、その実、他人の心の機微に敏感で、チャラく見えても男気のある一面を持ち合わせているため、何だかんだで女にモテる男。

嫌味がないところが逆に嫌味に思うくらい、顔も性格もいいやつなので、カイジは憎み切れないまま、今に至っている。



ヨシキは、翔とは対照的に、温厚で物静かで、優しさの塊みたいな男だ。

おまけに背が高くて外人みたいに整った顔立ちで、それを生かしてモデルなんてやってるため、こちらも結局のところ、女にモテる。




何で俺はあんなやつらと仲よくやってんだろうかと、カイジは今更なことを思いながら、うがいをした。




しかし、昔は馬鹿みたいなことばかりしていた関係も、4年前から少々おかしくなってきた。

翔の妹の真理が死んだ頃からだ。




その直後に母まで亡くした翔は、高校も辞めてしまい、イラ立ちや寂しさを紛らわせるために、喧嘩に明け暮れるようになった。

今は少しばかり大人になったのか、憂さ晴らしの対象を女へと変え、常にわけのわからない女をはべらせている。


気持ちがわからないわけではないため、カイジも易々とは口を出せないが、いい加減、どうにかしろよと言いたかった。
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