計画的俺様上司の機密事項
project2:部長の偽り、部下の嘘。
それからというもの、お母さんみたいに小言をいうし、着替えようとしたり、お風呂に入っていると覗こうとするおやじシンちゃんに化ける。

それでも料理はおいしくて、家事も完璧にこなしてしまう。

気をぬくと、ほっぺにキスされるけれど、それ以上に何かを仕掛けてくることはなかった。

この家はシンちゃんがいて成り立っている。

ありがたい気持ちでいっぱいなんだけど、シンちゃんに何もしてあげてないようで申し訳なくなる。

どうすればシンちゃんが喜んでくれるんだろう。

そうこうしているうちに、10月になってしまった。


「今日からだな」


「緊張する?」


「まあね。以前いた会社に似ているから会社の勝手もあるだろうからそれなりにやるから」


シャツといつものギャルソンエプロン、ジーンズから、紺色のスーツ、白いシャツに水色のネクタイを締めている。

見慣れていた洋服からスーツを着こなしていて、目のやり場に困る。


「どうかしたのか」


「……ううん、何も」


スーツ姿がすごく決まっていてかっこいいだなんて言えない。


「似合ってないのか、これ?」


「う、ううん。いつものシンちゃんじゃないみたい」


「なるほど、夏穂はこういうのが好みか。メモしとくか」


「な、何、朝からそんなこというんですかっ」


「いつものその照れ笑いが見られて安心した。じゃあ、行くか」


スーツ姿でやさしい笑みを浮かべるシンちゃんをみて、やっぱりかっこいいという言葉が真っ先に浮かんだ。


「でも、シンちゃん」


「家を出るぐらい、一緒でもいいだろ」


「わ、わかりましたよ。玄関までですからっ」


「本当なら手をつないで会社に行きたいところだけど」


そんなことできるわけないでしょ、と突っ込んだら、夏穂に怒られたと騒ぎながら自分の部屋へ行ってしまった。
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