蜜味ヴァンパイア~薔薇の花園~
序章
「‥う〜ん‥‥‥‥。」

ボクは、朝日の光で目を覚ました。

だが、その『目覚め』が、ボクの『運命』を大きく変えようとしていたなんて、あの時のボクには、思いもしなかったんだ。


「キャーッ!!大和くぅ〜ん!!」

「キャーッ!!冬夜くぅ~ん!!」

女子たちの黄色い声援が、体育館中にこだまする。

大和と冬夜のヤツ、相変わらず、モテモテだよなぁ。

そう思いながら、ふと女子たちのほうに目をやると、陽菜と春日とひよりの、3人の姿が目に入った。

たぶん、春日の『お供』だろう。

春日は、大和を一途に想っていた。

だから、今も、大和を熱い視線で見つめている。

そんな中、またしても、女子たちの黄色い声援が上がる。

大和のヤツが、ダンクシュートを決めやがったのだ。

まったく、アイツら二人はどこまで目立てばいいんだ?


ボク、『霧島佳那汰【きりしまかなた】』。

そして、『鷹栖大和【たかすやまと】』と『神野冬夜【じんのとうや】』。

女の子たちは、『柘植陽菜【つげひな】』・『櫻井春日【さくらいはるひ】』・『香坂ひより【こうさかひより】』。

ボクたち、6人は、小さい頃からの『幼なじみ』だった。

6人の仲は、とても良く、お互いの家を行き来していたほどだ。

その中でも、ボクと冬夜は大の仲良しで、冬夜には、ボクは何でも話すことができたし、打ち明けたりもしていた。

だが、その逆はなかった。

冬夜の『悩み事』を相談されたりは、一切、しなかった。

ボクは、少しは悲しかったが、冬夜は、どこか『ミステリアス』な部分があるヤツで、何を考えているのか分からなかった。

陽菜・春日・ひよりの中では、一番に陽菜と仲が良くて、冬夜とはまた違った意味での『心友』だった。

つまりは、お互いに『何でも話せる相手』だったのだ。

春日とひよりも、『大切な友達』なのだが、ボクにとって、陽菜と冬夜は、『なくてはならない存在』だった。

大和と冬夜は、バスケの試合が終わると、ゆっくりと汗をタオルで拭いていた。

そして、冬夜はコンタクトを外したのだろう。

いつもの銀縁メガネをかけた。

『メガネなんかかけなくてもいいのに‥‥‥‥。』

ボクは、冬夜にいつも言っていた。

かなり綺麗な顔立ちが、なりを潜めてしまう。

もったいないな。

そんな綺麗な顔を隠してしまうなんて‥‥‥‥。

ボクは、いつもそう思う。

そんな時、ボクたちの『運命』を変えようとするヤツが、陽菜と出逢おうとしていた。













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