蜜味ヴァンパイア~薔薇の花園~
#2
「ハーフ・ヴァンパイア?」

すると、ヴァンパイアはため息をつくと、

「お前は、自分の『正体』も知らないのか?」

呆れ果てたように、そう言った。

そして、

「俺の名前は『クリス』。お前も見た通り、『ヴァンパイア』だ。お前の名前は?」

「私は、『陽菜』。『柘植陽菜』よ。」

私たちは、お互いに自己紹介し終わった後、クリスは、『ハーフ・ヴァンパイア』について、説明し始めた。

『ハーフ・ヴァンパイア』。

ヴァンパイアと人間の間に生まれた者。

私は、祖父母と一緒に暮らしていた。

母親は、私が物心つく前に、私と父親の前から突然、姿を消した。

そして、それっきり‥‥‥‥‥。

私たちの前に『その姿』を二度と現すことはなかった。

亡くなった父親から、母親は『不思議な女性』だったと聞いたことがある。

もしかしたら、私の『ヴァンパイアの血』は、母親から受け継いだものかもしれない。

私は、そこまで、考えられるまでに、冷静になっていた。

私の髪は、艷やかな黒髪で、腰まである。

そして、これは誰にも秘密だが、黒のカラコンをしていた。

私は、本当は、世にも珍しい『深紅色の瞳』をしているのだ。

そして、『その事』を知っているのは、今はもう私ただ一人。

幼なじみたちでさえ知らない、私の『秘密』。

「お前は、『珍しいケース』だな。自分が、ハーフ・ヴァンパイアだと知らないなんて。」

クリスはそう言うと、私をまじまじと眺めた。

「その『髪』は?例え、ハーフ・ヴァンパイアといえど、『何かしらの色の髪』のはずだが‥‥‥‥?」

と、解せないという様子で聞いてくる。

「私は、『生まれた時から、黒髪よ』。」

私は、腰まである長い黒髪を触りながら、そう言った。

「そうなのか?それは、やはり『珍しい』な。艷やかな黒髪もキレイだ。お前らしい。」

そう言うと、クリスはその指で、私の髪をすくった。

そして、妖艶な笑みを浮かべて、私を見つめてきた。

ドキンッ!!ドキンッ!!ドキンッ!!ドキンッ!!

私の胸が急速に高鳴る。

クリスの深いブルーの瞳に、今にも吸い込まれてしまいそうだった。

それが、私とヴァンパイアであるクリスとの『運命的な出逢い』。

そして、その『出逢い』が、後に私たちや周りにいる人々の『運命』を大きく狂わせ、変えていくことになるのだった。







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