蜜味ヴァンパイア~薔薇の花園~
血と薔薇と運命の輪

#1

「ルイ様。どこへ行ってらしたのですか?」

「『エリック』か。」

エリックと呼ばれたヴァンパイアは、ルイに耳打ちする。

「『長』がお呼びです。」

「長が?何の用だ?」

ルイは眉根を潜めて、エリックにそう尋ねた。

「さぁ、それは私は存じ上げません。」

エリックはそう言うと、

「それでは、私は『クラリス』様の元へ戻らねばなりませんので‥‥‥‥。」

その場をすぐさまに立ち去って行った。

ルイから、初めて冷笑が消え、ふぅとため息をつくが、すぐに元の顔に戻り、

「ヴァン。長のところへ行くぞ。」

そう言った。


「それでは、クリスの居所は掴めていると、そういうことですか?」

「あぁ、そうだ。『ハーン』。」

ハーンと呼ばれたヴァンパイアは、長の右腕だった。

「そうですか。」

そして、ルイから、顔は見えないが、玉座に座っている者にこう尋ねた。

「長、いかがいたしましょう?」

「‥そうか。ルイ!!」

玉座に座っている長が、初めて口を開いて、ルイの名を呼んだ。

「はい。」

ルイは、返事をして、一歩、前に進み出た。

「いいか?必ずや、クリスを『消す』のだ。分かったな?」

長は、ルイにそう命令した。

すると、ルイは深く冷笑を浮かべると、

「分かりました、長。」

そう返事したのだった。


私と佳那汰が、クリスとルイと、それぞれに出逢い、一週間ぐらい経った。

そして、この日を境に、私たちの『運命の輪』が回り始めようとしていたのだった。




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