となりの専務さん
社長の事情
あれから三ヶ月が経った……。



「ん……」

朝日に目を細めながら、ゆっくりと体を起こす。


（あ……）

となりで、専務がまだ寝ていた。
今日は土曜日だし、まだ寝かせておいてあげよう。


……あれから。私は無事に初任給が出て、壁に穴を開けてしまったことを大家さんに話した。


前に専務が言ってた通り、壁の老朽化がひどかったからと、大家さんには思ったよりは怒られず、修理費も全額とはいかなかった。


専務も、やっぱり少し出すとは言ってくれたけど、壁の損壊自体に専務は関係ないのでどうしても断った。初任給まで待ってくれただけですごくありがたいから。


壁の修理は二週間かかった。
その際、昼間は私と専務が仕事に行っている間に修理がされた。

夜は工事自体はなかったけど、修復中は部屋には基本入らないようにとのことだったので、私はトモカちゃんにムリを言って、数日間おうちに泊まらせてもらった。
トモカちゃんがひとり暮らしでよかった。
その際、トモカちゃんには家の借金のことを話した。さすがに専務のことはまだ話せなかったけど、おうちに泊まらせてもらうっていう迷惑をかけるんだから、ちゃんと本当のことを話さなきゃって思った。
トモカちゃんは、やさしく『大変だったね』と言ってくれた。
……私はもう少し、周りの人たちのことを信頼して、もっともっと自分の弱みも見せていくべきだったかもしれない、と思った。そのくらい、トモカちゃんはやさしかった。

専務はしばらくホテルに泊まると言っていた。さすがお金持ち……私には到底ムリです。
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