俺様当主の花嫁教育
都会で拉致されタイムトリップ
その週の木曜日の夜、彼から『土曜の朝九時に東京駅で待ってろ』と一方的で不遜なメールが来た。
『何のために?』と返したメールは完全に無視された。


どこまでも偉そうな態度にムカムカしたけど、彼にとっては私の質問こそ愚問だったのかもしれない。
彼と私の間には、『私を着物の似合う大和撫子にする』という口約束があるのみで、この腹の立つ呼び出しもその為でしかない。
少なくとも、休日のお誘いがデートになる訳もないんだし、もしデートのお誘いだとしたらお断りする権利はある。


土曜日の朝九時。
普通に働くOLにとっては、まだまだ明け方のような感覚の時間だ。
こんな時間から一体何を?と、欠伸しながら東京駅の指定の場所に佇んだ私は……。


「笠原志麻さん?」


目の前に滑り込んだ黒塗りリムジンに気を取られ、しかもウイ~ンと下がっていく後部座席の窓から顔を出した女性に名前を呼ばれて、一瞬目を丸くして欠伸をのみ込んだ。
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