俺様当主の花嫁教育
意表を突かれた気分で、え?と顔を上げた。


私の向かい側の席で、見れなくないけど決してイケメンとはいえない、まあ十人並みのルックスの西郷さんが私を見遣っていた。


「あのさ。俺がうちの親会社の社長の一人息子ってことは知ってるよね?」


特に周りを憚るでもない口調で私に訊ねる西郷さんに、私は二度瞬きをした。


聞かれるまでもない。もちろん知ってる。
知り合ったのはただの合コンだけど、話してる最中から彼は身分を憚らなかった。


「も、もちろん。それが?」


頷いて聞き返す私も私だ。
正直なところ、彼がいわゆる御曹司だと知ったから、その夜、酔いに任せてお持ち帰りも許したし、この半年付き合ってきた。


お金目当て……とは言わないで欲しい。


だってたまたま知り合って、ピンとは来なくても、悪くない男が超金持ちのボンボンだったとしたら、アラサーと呼ばれる独身OLならとりあえず飛びついてみるもんだ。


誰もが羨むイケメンに愛されてラブラブ……を夢見て追いかけた二十代前半の頃とは違う。
この年になれば、貪欲に幸せを求める打算だって必要なんだ。


いくら晩婚化、未婚化が叫ばれる昨今とは言え、三十目前にすれば友人の半数は既婚者だ。
そんな中、前の彼氏と別れて一年経過の私が次の出会いに求めたのは、結婚を考えられる人、というのが絶対条件だった。
< 2 / 113 >

この作品をシェア

pagetop