ちょっと広めの和室に、古いCDデッキから流れる三味線の音色が響いている。
白い足袋が小さい歩幅で畳を擦る。
ワンテンポ先を行く千歳さんの動きを倣うのに必死の私に、


「最初はどうなるかと思ったけど、なかなか仲良くなってるみたいじゃない? 志麻ちゃん」


からかうような声が横からかけられた。


踊りながら扇子を片手で開く動作に苦戦していた私は、きょとんと目を丸くした。
千歳さんは、聞き返されたと思ったのか。


「東和と志麻ちゃんよ。あの夜から雰囲気変わって来たな~って思ったのよねえ」


涙で目を赤くしたまま連れて来られたあの夜、たまたま本家に来ていた千歳さんに気づかれてしまった。
状況証拠だけで御影さんに疑惑の目を向けた千歳さんに、私はオフィスで起きたことだけをたどたどしく説明したのだけれど。


私と御影さんの雰囲気、って……。


意地悪くニヤッと笑みを向けられて、私の胸はドッキーンと大きく騒いだ。
無防備の状態で仕掛けられた攻撃に動揺を隠せず、扇子を落としてしまう。


「なっ……なんですか、雰囲気って」


慌てて裾を押さえながらしゃがんで、扇子を拾い上げる。
再び姿勢を正した時には、千歳さんも踊るのをすっかり止めていた。


「……あの、千歳さん。続きを……」


微妙にタジタジしながらなんとか笑って促したけど、千歳さんは扇子を閉じて腕組みまでして、私に上から下まで一筆書きのような視線を向ける。
美しい瞳が発する色気に当てられて、私は思わず一歩後退した。