最後の賭け
彼の家


 ユウジのマンションに行くのは久々だった。

 真依子のアパートとは反対方面の電車に乗る。
 
 大きい駅へと向かう方面だからか、車内は思ったより混んでいた。

 クーラーが効いていないのか、車内が蒸し暑い。

 扉が開く方に乗っていて正解だと思った。

 彼の住んでいる街は、ネオンがキラキラしている。

 人も多いし、繁華街も近い。

 初めて連れて行ってもらったときは、こんなところに住んでいるなんて意外だと思った。

「職場も近かったし、それに案外家賃安いんだよ、この辺。物騒なところもあるからかな。真依子さん、危ないから来るなら連絡してね。迎えにいくから」

 なんでそんなに自然と気配りができるのだろう。

 なんでそんなに優しくできるのだろう。

 前の彼女にもそうしたのだろうか。

 そう思うとなんだか嫉妬してしまう。
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