キミに捧ぐ愛
3.
逃げ道
ーーガッシャーン
うだるような暑さの中、大きな音で目が覚めた。
ミーンミーンと蝉の鳴き声がそこら中に響いている。
「広ちゃんっ!お願いだから……っやめて」
母親の悲痛な声が聞こえて、耳を塞ぎたい気持ちに駆られる。
だけど思いとは裏腹に、あたしは自然と部屋を出てリビングに向かっていた。
もうホント、いい加減にして。
毎日毎日、やってらんない。
力任せにリビングのドアを開けた瞬間、目の前にヒュンと何かが飛んで来た。
それはギリギリ頬をかすめて、壁に当たって床に落ちた。
な、なに?
そこら辺に散らばるガラスの破片。
どうやら母親の手鏡を広大が投げたようだった。
手当たり次第に投げているのを見ると、あたしに向かって投げたわけじゃなさそうだ。
それでもちょっと怖かった。
「広大……いい加減にしなよ!」
握り締めた拳がプルプル震える。
大事に育てられて来たくせに、何が気に入らないのよ?
何でぶち壊そうとすんの!?