キミに捧ぐ愛

愛を求めて



その足で家に帰り、玄関のドアを開けて2階にある自分の部屋に直行した。


男物の革靴があるってことは、今日はパパが家にいるってことだ。


もともと出張が多くてほとんど家にいないパパだけど、今回は1ヶ月くらいで帰って来た。


2〜3ヶ月したらまた出張に行くんだろうけど、長いと半年くらい帰って来ないこともある。


中1と幼稚園の弟がいるけど、2人とは半分しか血が繋がっていない。


ほんとのママはあたしが1歳の時に病気で亡くなり、今の母親はあたしが3歳の時にパパが再婚して出来た母親。


弟2人は正真正銘今の母親とパパの子だけど、あたしだけは違う。


だけどママの顔や温もりを覚えていないあたしにとって、新しい母親の存在は何よりも嬉しかった。


でも、いつからかな。


最初は優しかった母親も、再婚してすぐに弟を妊娠したからなのか、あたしに対する態度が変わった。


『お姉ちゃんなんだから』


『自分のことは自分でしなさい』


『甘えないで』


『見てわからない?忙しいのよ』



何かにつけてそう言われ続け、いつしか母親はあたしに目を向けてくれなくなった。


小1の時、風邪を引いて熱が出て病院に運ばれた時も、3歳の弟にかかりきりで心配なんてしてくれなかった。


気を引きたくて必死に話しかけても、あたしに向けられるのは呆れ果てた面倒くさそうな顔ばかり。


弟にだけ向けられる、とびっきりの笑顔が羨ましくて仕方なかった。


あたしを見てって、何度そう願ったかな。


願うたびに裏切られて、いつしかそう願うことをやめてしまった。


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