オフィス・ラブ #∞【SS集】
俺、これ、ダメだ。



「え?」



昼食に出したサラダを、渋い顔で眺めて言うのに、驚いた。

好き嫌いなんて、あったっけ。



「どれですか」

「これ」



新庄さんが、角切りのセロリをお箸でとりのけて、私のお皿に入れる。



「セロリ、苦手ですか」

「それ、セロリか」

「………」



この人、仕事と車以外の一般常識を、一度見直したほうがいいんじゃないだろうか。

あ、と新庄さんが、テーブルに置いたPCの画面に目をやる。



「抜いた」

「別クラスですか」

「そう、総合、28…27位か?」



お箸を持ったまま、マウスを操作して。

リザルトと、生の動画が配信されているウインドウを、ちょうどよく配置して、食事を再開した。


行儀悪いなあ。


だけど、しょうがない。

今日は、そういう約束なのだ。


ドイツの、何度聞いても覚えられない名前のサーキットで、24時間の耐久モーターレースが行われている。

テレビでは、よくても結果しか報道されないけれど、ネット上では時代を反映して、現地から生の動画配信がある。

24時間耐久なわけだから、当然、スタートからチェッカーまでのすべてを見ようと思ったら、24時間かかるわけで。


昨日の土曜日、夕方まで仕事をしてきた新庄さんは、その後私の部屋に来て、完全な観戦体制だ。

昨夜スタートしてから今まで、少し寝ただけで、ほぼ全部観戦してるんだから、相当に好きなんだろう。


ちなみに私は、そこそこたっぷり寝た。

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