オフィス・ラブ #∞【SS集】
新庄さんは、満足げに笑うと、意地悪く眉を上げてみせる。



「最初の人より、最後の人なんだろ?」

「もうやめてください…」



涙が浮かんでいるのを意識しながら、私が悪かったです、と弱々しく非を認めると、その顔がふと優しく微笑んだ。



「俺だって、そうだ」



わかってます。

だけど悔しくて、うらやましくて、仕方ないの。

私がどうやってももう知りえない、昔の新庄さんを知ってる人が。


私、自分を焼きもちやきだなんて、思ったことないけれど。

もしかして、これがそうなのかな。


新庄さんも、同じ?





ドアを閉めてもカーテンを閉めても、どうやってもやっぱり明るい部屋で、帰るなり抱きあって。

こんな時間から、同じようなことをしてる人たちが、世の中にどのくらいいるんだろうと、くだらないことを考えた。


熱い身体の重みを、全身で感じながら、昼の不仲ぶりを思い出して、おかしさがこみあげる。



「さっきの、スカイラインさ」

「はい」

「夜景も綺麗らしいんだ」



終わったら、行こうぜ、と言って私を抱きしめる新庄さんに、笑った。



「終わったら、ですか」



ほんと、ムードがない。

指摘されて、初めて気がついたらしい彼は、少し声を上げて笑って。



「一緒にいる時間は、有効に使わないとだろ」



しれっとそう言って、私の鎖骨にキスをくれる。

笑いながら、汗ばんできた髪に指を通して、お返しに私も、耳のあたりにキスをした。

くすぐったそうにすくめる肩に、ささやく。



「新庄さんに、言われたくない」





Fin.

──────────
thanks : つきね様/夏姫愛様/sora様/ユキ様/もり様/どん様

< 96 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop