翌日、私は七海子と一緒に出社した。
いつもより少し早くついたオフィスにまだ人影は少なく、営業三部のデスクには池永さんひとりの姿しか見えない。


「おはようございます」


「……おはよう」


パソコンの液晶から視線を動かさないまま、池永さんが素っ気なく言った。
池永さんに愛想が無いことは前からだけど、あれ以来——歓送迎会での一件以来、池永さんとの間には変な緊張感が漂っている。


な、なんか、気まずい。


池永さんから発せられる奇妙な緊張感に耐えながら、パソコンの電源を入れて起動を待つ。
その何とも言えない沈黙を、突然の内線が不意に破った。


私が手を伸ばすより早く、池永さんが受話器を取る。
そして事務的な相槌を幾つか打つと、直ぐに電話を切った。
いつも崩れることのない表情に、見たことのない焦りが浮かんでいる。

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