会場の隅の方にあるテーブルまで戻ると、池永さんはようやく私の手首を解放した。
そして無造作に飲み物のトレイに手を伸ばし、シャンパングラスを一息に飲み干す。
普段は見たことのない少々荒っぽい仕草に、一瞬言葉を失った。


「あの……」


「なんだ」


目を逸らしたままそっけなく答える横顔は、なぜだか会社で見るより甘さを帯びている。
本当はこんなにも華やかな人だったのだということを、今更のように思い知らされて、私の鼓動はまた速まった。


こんなの、社内の憧れの的になって当然だ。
私の場合、いつも怒られている極度の緊張状態から、池永さんのこの華麗なイケメンぶりを、冷静に判断できていなかったのかも知れない。


しばしぼうっと見惚れる私に、池永さんが目を細めてこちらを見た。
なんだよとばかりに見つめられて、池永さんってすごいイケメンだったんですね、という心の声がうっかりこぼれそうなのを必死で押さえ込む。