強引な次期社長に独り占めされてます!
立ち上がり、ロッカールームでコートを羽織ると会社を出た。
12月の冷たい風が頬に触れ、マフラーもしてくればよかったと後悔する。

また戻るのも時間がかかるし、マフラーは諦めよう。

電車に乗って最寄り駅で降りると、教えられた地図を頼りにイベント会場に着いた。

それからスタッフ専用の搬入口を覗き込み、この寒空にペラペラのスタッフジャンパーを着たうちの人たちを見つけて近寄る。

「あの……すみません……」

一応、イベントスタッフではないから入口辺りで声をかけてみたけど、作業をしている人たちには聞こえないみたい。

「あの……!」

勇気を出して再度声をかけた瞬間、後頭部にゴツンと衝撃が走った。

勢い余って前のめりに倒れる。
もちろん、顔も思いきりぶつけて、目の前がチカチカ。

痛い。痛すぎる。

「だ、大丈夫か?」

ガランガランと何かを床にぶちまける音と一緒に、男の人の声が聞こえた。

痛いことは痛いけど、羞恥心が勝って慌てて起き上がる。

「だ、大丈夫で……!」

顔を上げた瞬間に見えたのは明るい色合いの茶色の髪。
だけど、次の瞬間には視界が急に暗くなって、ふわふわとした感覚。

あれ……? まだ昼間なのに暗く……?

考えられたのはそこまでだった。










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