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月曜日、出社してみると社員入口に高井さんが立っていた。
ペラッペラのスタッフジャンパーを着て、寒くないのか軽装の彼にビックリする。

「おはよう。松浦さん」

「おはようございます……」

満面の笑みにゆっくりと頭を下げて通り過ぎようとしたら、何故か高井さんはついてきた。

「あれからどう? 頭痛い?」

瘤が痛いと言えば痛いけど、思っていたより青さは引いたし腫れも引いてきてくれてる。
それなら問題ないと思うけど、退院する時に『頭痛や吐き気がしたら、病院に来るように』と言うお医者様の真面目な言葉があった。

それを加害者の高井さんに言っても始まらないし……。

「大丈夫です」

そう言ってもついてくる。

うつむき加減で歩いて、どうしようか悩んだあげく、事務部のドアに手をかけようとしたら、いきなり腕を掴まれてビクリと高井さんを見上げた。

「なら、ご飯食べに行きませんか? お詫びも兼ねて」

お詫び以外に何を兼ねるつもりだろう? ぼんやりしていたら低い声が割り込んでくる。

「いわば怪我人を退院後すぐに食事に誘うのは感心しないな。それに、そういうのは業後にした方がいい」

振り返ると、黒に近いグレーのコートを着た上原主任が、無表情に腕を組んで立っていた。

「しかも、入口を塞ぐのは問題だ」

「すみません!」

パッと高井さんが手を離して後ずさる。それを眺めて安心して息をついた。