強引な次期社長に独り占めされてます!
「あの……?」

『……別にお前を取って食うわけではない。さすがに俺もそこまで野獣じゃないぞ』

いや。私だって取って食われると思ったわけじゃないし。

ただ、仕事でもないのに、わざわざ男の人と出歩くのも気が進まない。

『どうした? 体調が悪いか?』

心配そうな主任の気配に、ハッと気がついた。

そうか、そうだよ。なんで思い付かなかったかな。

「ええ。少し頭痛が……」

『迎えに行く。部屋番号を教えろ』

はい?

『すでにマンションの下にいるから、車で病院に行こう。部屋まで迎えに行くから、お前は落ち着いて病院に行く用意をしろ』

ぎゃ~! 違う方向に話が行った!

そうだね、そうなるよね。
一週間前とはいえ頭をぶつけて入院したばかりだし、普通は『そっか、ちゃんと休めよ』となるはすがないよね『大丈夫か』ってなるよね!

主任、面倒見がよすぎだと思いますから!

「……ごめんなさい。嘘です。元気です。今、下りていきます」

『……そうか。じゃあ下で待っているから』

スマホを置いてパタパタと動き始めた。

「さすがにジャージはダメだよね。でもデート服なんて持ってないし。黒より白かな、白なんだろうけど黒しかない。あ、でも本気のデートじゃないんだしいいか」

可愛く見せる必要はないよね。
付き合っているわけじゃないんだし。
教育的指導をするって言っているだけなんだし……。

まだ残っている青あざをメイクで隠して、黒いワンピースに白いパールのネックレス。それから黒いコートを着て、黒のショートブーツを合わせた。

今さら仕方がない。開き直ってやる。

どーせ私が甘い格好したって似合わないんだもんね!
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