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「おはようございます」

月曜日。今日はちゃんとロッカーにコートとバックを置き、事務所に入って出勤のカードをスキャンして、通りすぎようとしていた野間さんに挨拶をする。

前髪はおろしているけど、頑張って笑顔を試みてみると、野間さんに目を丸くされた。

「……おはよう。何か良いことでもあった?」

「特にはありません」

「そうなの? でも、笑顔で挨拶は良いことよね」

やっぱりそうなるよね。私もそう思った。無表情よりは笑顔の方がいいんだろうと……。

「でもちょっぴり不自然だから、前髪切りなさいよ。その方が絶対に話しかけられやすいし」

「いえ。話しかけられやすくとは考えてません。笑顔での挨拶は礼儀かと思っただけです」

話しかけられても対処に困るだけだし。困ることはお断りしたい。

「そうやっていても、話しかける人は話しかけてくるんだけどねぇ」

考えるように野間さんが呟くと、事務所のドアが開いて主任が入ってきた。

「おはよう」

「おはようございます」

「松浦。かなり不自然。お笑い番組でも見て、腹の底から笑って挨拶しろ」

コートを脱ぎながら、主任はチラッとだけ私の笑顔に一瞥をくれて、そのまま自分の席に向かった。

……朝の挨拶に、そんな笑いが必要とは思わないのですが。

「私は松浦さんの努力を認めるわよ。ま、頑張りなさい」

野間さんにポンポン肩を叩かれて、眉を困らせる。