オフィス・ラブ #0
何考えてるか、わかんない。
何度目かになる言葉を言われる。
いつも不思議に思う。
出会うのだって、つきあうのだって、ふたりでなきゃできないのに。
終わる時だけは、決まって女だけが被害者のような顔をする。
お互いに、原因があるんじゃないのか。
片方だけが悪いなんてこと、あるんだろうか。
「そうか」
とりあえず、言っていることはわかる、と伝えるつもりでそう言うと、悲しみよりは憎しみの勝った目でにらみつけられた。
何か、こうしてほしいとか、ああしたほうがいいとか、要求でもあるのかと次の言葉を待っていると、長い沈黙の末、女は、じゃあね、と吐き捨てて去った。
どうやら向こうも、こちらの言葉を待っていたらしい。
じゃあね、とはどういう意味だろう。
もう会わないという意味なのか。
今日のところはこれで、という意味なのか。
貴重な休日に呼び出されたカフェで、新庄は小さくため息をついた。
手をつけるタイミングのなかったアイスコーヒーのグラスが、むなしくずぶ濡れになっている。
もう飲む気も起こらず、しっかり置いていかれた伝票を手に、席を立った。