冴えない彼は私の許婚
あの人が許婚だなんて…

「イヤです!お父様なんとかして下さい!」

「お祖母様の決めた事なんだよ…悪いな?」

“ 悪いな ” じゃないわよ!

「お父様は、娘の幸せ願わないんですか!?」

「勿論、碧海の幸せは願ってる。しかし、私の立場もあるんだ。分かってくれ…」

「そんな…」

差咲良碧海(ささくらあおい)25歳 大学卒業後、お祖母様の紹介で優美堂化粧品に入社。
開発部、開発1課に配属される。

1課は口紅を開発する部署だ。
リーダーの九龍さん、今年入社の木之下一郎太君と伊東玲美ちゃん、そして、3年先輩の葉瀬恭之助さんと私の男性3人女性2人の5人で構成されている。

リーダーの九龍さんは33歳独身、長身でイケメンだがちょっと軽そうな人。
木之下君は玲美ちゃんに気があるらしく、仕事より彼女にアプローチする事の方で必死のようだ。
一方の玲美ちゃんはそんな木之下君を良いように扱っている。
まぁ良いコンビと言うところだ。

問題は先輩の葉瀬さんだ…
仕事は出来るらしく、それまで幾つものヒット商品を出している。
でも、研究しか興味が無いようで、いつも頭はボサボサ、瓶底メガネ、白衣はシワシワ、猫背でいつも下を向いていて、簡単に言えばダサい。

その上、話しかけても小さな声で『なに?』『うん』『そう』『別に』しか返ってこない。

このどう見ても根暗で冴えない男が許婚だなんて絶対に嫌だ!

先月お父様から『碧海にはお祖母様が決めた許婚がいる』と、聞かされた。
その許婚が葉瀬さんだったのだ。

私の好みじゃない!
私にだって選ぶ権利は有るはず!
今どき親が、いやお祖母様が結婚相手を決めるなんてありえない!

私の家は代々女系家族で、お祖母様もお母様もお婿さんを貰っているのだ。

だから、長女である私も婿をと言うことなんだろうが…
にしてもだ! よりによって葉瀬さんだなんて…

お父様は家業の社長を勤めているが、実際の実権を握っているのは、未だお祖母様なのだ。
お祖母様は警視総監をちゃん付で呼んだり歴代の総理大臣に直接電話している。

孫の私でもよく分からない魔女のような人で、家長であるお祖母様の決めた事には、誰も反対できないのだ…
こうなったら、葉瀬さんの方から断って貰うしかない!
うん! それしかない!





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