嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


「オレ、ソファーでちょっと休ませてもらうからお前は早く寝ろ」

「ちゃんとお布団敷きますよ?」

「いいよ、そんな長い時間いない」

少し逡巡して、成海がブランケットを運んできた。

「キッチンの奥のドアを開けたらトイレとバスなので好きに使ってくださいね」

そう言うと自分が化粧を落としに行ったらしく、水音がした。

ソファーに座ってネクタイを緩めて部屋を見回す。

ここにも大きな本棚。

あの頃と変わらない成海。


苗字が変わったのは親の再婚のせい。
だから指環がなかったのか。

ざわつく心を鎮めるために本棚に目をやる。

「眠れないなら好きなの出して読んでくださいね」

いつの間にか後ろに成海が立っていた。
何故かタオルで半分眼鏡をかけた顔を隠すようにして。

「・・・・・なんで顔隠してんの?」

「いや・・・・・だってすっぴん・・・・・」

「アホ、たいして変わらないだろ」

「そんなことないですよ」

ぷうっと膨れる顔がなんだか可愛い。

高校生だった頃に戻ったみたいな成海。


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