一度だけ

ただ触れるだけのキスだったのに

どうしても忘れられない。



会社から一駅離れた、路地奥の隠れ家のような課長の行きつけだという居酒屋。

課長と小早川と3人で色気もなく飲むことになった。

「池上ってクールなできるイケメンやと思ってたけど可愛いとこあるよね」

「は?」

ビールのグラスを口に持っていき、ニヤニヤしながら課長が言う。

「たしかに。チョイスは間違ってないけど」

「お、小早川、上手いこと言うね」

「なんの話しですか」

「なんのって成海のことに決まってるだろ」

突き出しの胡瓜とタコの酢の物を口にしていたオレは思わず噎せた。

「ゲホッ・・・・・成海って」

「お前、かなり気に入ってるっていうか狙ってる?入社してから大人気だったのに社内の女の子には興味なさそうにしてたから僕は意外でさ」

小早川に言われて言葉に詰まる。そんな分かりやすく態度に出したつもりはないのに。

「・・・・・否定はしない。確かに気に入ってる」