この度、友情結婚いたしました。
「夫だけは、絶対に好きになってはいけません!」
琢磨が帰っていってから、どれくらいの時間が過ぎただろうか。

太陽はすっかり沈んでしまい、アパートには明かりが灯され始めた。


「おい、いつまでそうしているつもりだ?」

気配なく聞こえてきた声に、身体が大きく反応してしまう。

振り返ると、ドアにもたれ掛かるように立っていたのは春樹だった。


「あんまそうやって黄昏れていられると、ご近所に夫婦喧嘩したのかって思われるから、そろそろ部屋に入ってきてくれない?」

「ごめっ……」


春樹の言うことは最もだ。

アパートに住む住民はファミリー層ばかり。
この時間は大抵どの家庭も在宅中だ。

そんな中、ここにずっと立ち尽くしてしまっていたら、何事かと思われても仕方ない。


足早に部屋へと向かい、春樹に促されるまま部屋の中に入るとすぐに春樹は玄関のドアを閉め、なぜか私の腕を掴んだ。


「え……なに?」

春樹を見れば、いつになく真剣な瞳に言葉も視線も吸い込まれていく。
そのまま静かに言い放った。

「聞きたいことがふたつある」

「……ふたつ?」
< 205 / 379 >

この作品をシェア

pagetop