⁂初恋プリズナー⁂
変身

私の父はシステムエンジニアをしていて、小さい頃から単身赴任で家を空けている事が多かった。

その為、私と母は現在も二人暮らしをしている。

母は介護の仕事をしていて、月7~8日くらい夜勤で夜不在の日がある。

そんな日は、定時に仕事を終えるとスーパーによって夕食の買い物をして帰宅し、洗濯をしながら夕食の準備に取り掛かる。

そうこうしているうちに、仕事帰りに颯ちゃんがやってきて、2人でご飯を食べるのが通例となっている。

それでも、颯ちゃんの婚約の話を聞いてから、こういう事はしちゃいけない気がして、やんわりお断りをいれてるんだけど、何かにつけて様子を見にやってくるんだよね。

きっと、女の子が1人家に居ると色々心配なんだろうけど。

婚約者のいる男性が、いくら女に見られてないとはいえ親が不在で血の繋がりもない女の子が1人のところに上がり込むのは、世間的にいただけないと思うのよね。

私が婚約者だったら、自分の彼が他の女性の家で2人きりなんて……絶対に嫌だし。

何度断っても、当の本人は全く気に留めていないみたいだけど。

もう少し女心を考慮してほしいものよね。

そう言いながら、強気で家から締め出せず、毎回颯ちゃんの分の夕食もしっかり作ってしまう自分もどうなのかと自嘲しちゃうんだけど。

つい、もう少し一緒に居たいと思ってしまう、弱い私なのです。

本当、もう少しだけ……。

洗濯を終えて、夕食も出来上がり、ソファに身体を沈めて颯ちゃんの帰りを待つ間。

家事の時に外していた指輪を、厚かましくも左手に嵌めて眺めていた。

右指では若干苦しかった指輪は、驚くほど左指にジャストフィットしている。

思えば、颯ちゃんは私の事を私以上に知っている。

食べ物の好き嫌いは勿論。

身長、体重、視力。

靴のサイズのみならず、下着のサイズも知られている。

これは部屋に干しっぱなしなのを忘れて、招き入れてしまった自分が悪いんだけど……。

しかも、生理周期も知られているらしく、生理の時は車にひざ掛けまで用意されているという周到さだ。

腰から下が冷えるから有り難いんだけど……。
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