冷たい舌
予兆
 


 拝殿の前、玉砂利が敷き詰めてある境内で、飽きっぽい忠尚が真っ先に手を止め、伸びをした。

「あー、疲れた疲れた。

 おい、透子。
 もういいんじゃないのか?」

 透子はせっせと参拝客の捨てていったゴミを拾いながら、振り返る。

「駄目よ。
 お祖父ちゃん、うるさいもの」

 忠尚は竹箒の柄に腕をのっけて、溜息をついた。

「だいたい、なんでお前が見合いをすっぽかした罰を俺たちがやんなきゃいけねえんだよ」

「なに言ってんの。
 あんたが唆(そそのか)したんじゃない。

 それに連帯責任でしょ?
 こういうのって」

「俺はお前に協力してやっただけだろ。

 そういや、昔からよくとばっちり食ってたよな。

 親父にめちゃめちゃ怒られた、あれ。

 ほら、法具使って三人でちゃんばらやって、不動明王の炎の部分折っちゃったやつ。

 あれだって全員で叱られたけど、折ったのお前だよな」
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