……あー疲れた。


俺は出先から戻ったその足で『ciel』の扉を開いた。



「はい、お疲れ様」



心羽が俺の前に出してくれたのは、コーヒーと羊羹。


立ち上る香りを嗅ぎながら、羊羹を口に運ぶ。


はぁ、ホッとする。


スイッチを切るように、フッと力を抜いてコーヒーをすすれば、カウンターの向かいでなにか作業をしていた心羽が俺を見てくすりと笑った。



「コーヒーと羊羹……合う?」


「んー、すげーべすとまっち」



俺の好みを出しれくれる心羽は、ほんわかマイペースそうなのに意外とよく見てる。


深く介入せず、はっきりモノを言う彼女は俺の親友だ。


つい数時間前、俺はとあるお嬢様とケリをつけてきた所で、捨て台詞に高飛車な言葉を浴びせられてきた。


……ってうか、こっちから願い下げなんだっつーの。


今度こそは、なんて勝手にいい方へ思い描こうとして、やっぱり裏切られる。


俺は何も言わずそこに居るだけの親友にほっと息を吐いた。