Time Paradox

おそろしの舞踏会

リリアーナはドレスを見ていると、侍女のような人が部屋へ入って来た。
この屋敷のお手伝いさんであろう。


「リリアーナ様、どのようになさいますか?」

「…そうね、これがいいかしら?」


リリアーナが手に取ったのは淡いピンクのドレスだった。

チュールがたくさん重なったスカートに、肩が出るタイプのパフスリーブとなっていた。


「かしこまりました。」

お手伝いさんは表情一つ変えず、慣れた手つきでパニエを履かせ、ドレスを着せた。


「あ、ありがとう。」


「それでは、失礼しました。」


そう言ってまた無表情で部屋を出て行った。

リリアーナは、その様子に少し違和感を覚えた。

そして、こんな不気味な屋敷を少しでも早く抜け出したいと思い、ジャックはきっと来ないと諦めてはいたものの、心のどこかで期待してしまう自分がいた。
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