季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
「なるほど、それはきついね。」

「置いてきぼりにされた感じで…。まだ気持ちがうまく整理できてません。」

「そりゃそうだよ。それで、ホントにそんな嘘ついてやり過ごそうと思ってる?」

「結婚してみてうまくいかなかったから別れたのなら仕方ないけど、結婚式の直前にこんな事になったなんて…やっぱり言いづらいです。」

「そうかな?正直に話せばわかってもらえるんじゃないの?」

マスターはカップにコーヒーのおかわりを注いでくれた。

「私の身内はあれこれうるさくて…。ここ何年かは顔を合わせるたびに、結婚はまだかってずっと言われてきたんです。やっと結婚が決まったのに、結婚式の直前に相手に捨てられたなんて言えません。」

マスターはコーヒーを飲みながら顔をしかめた。

「相手の男が事実を話して詫び入れるのが筋だと思うんだけどな…。それじゃダメなの?」

「私が親戚にいろいろ言われるのは同じだし…両親に肩身の狭い恥ずかしい思いをさせたくないです。」

「そうか…。朱里ちゃんは両親を含めた周りの人たちを騙す覚悟はできてるんだね?」

「ハイ。」

「なら、ここに相談してみるといいよ。」

マスターは事務机の引き出しから名刺を一枚取り出した。

「佐倉…代行サービス…?」

「俺の古い知り合いがやってるんだ。そこで、うんと男前の偽花婿を紹介してもらいな。」





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