季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
罪を悔やんで子を憎まず
それから何事もなく週が明けた。

今日はファミレスのバイトが休みなので、カフェのバイトが終わってから、たくさんのショップが軒を連ねる通りに行ってみる事にした。

夕べ布団に入って眠る前に、順平からもらったネックレスのチェーンが絡まって取れなくなったのをそのままにしていた事を思い出した。

新しい物に取り替えて、もう一度身に着けてみよう。

順平、覚えてるかな。

時々は思い出話もしたいのに、順平は昔の話はしようとしない。

そもそも会話自体、あまりないんだけど。


ジュエリーショップで、ネックレスのチェーンを新しい物に取り替えてもらった。

元のチェーンとよく似た物を選んだから、違和感はほとんどない。

ネックレスを早速つけて鏡にうつしてみた。

あの時の順平の笑顔を思い出す。

またあんなふうに笑ってくれたらいいな。



しばらく辺りのショップを見ながらブラブラ歩いた。

喉が渇いたな、ひと休みしよう。

コーヒースタンドで窓の外を眺めながらカフェラテを飲む。

バッグの中でスマホの着信音が鳴った。

画面に映っているのは“壮介”の文字。

お金の事かな?

電話に出ると壮介からの用は思った通り、残りのお金を返したいという事だった。

壮介の気が変わらないうちに返してもらおう。

ちょうど今日は時間があると言うと、壮介の仕事が終わってから会う事になった。

もう壮介を責める気も失せたけど、会ったらイヤミのひとつくらいは言ってやろう。







< 160 / 208 >

この作品をシェア

pagetop