季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
カフェでのバイトが終わり、部屋に帰った。

朝からなんだか体がだるくて寒気がしていた。

今は身体中が熱い。

そういえば、体温計なんて持ってなかった。

だけど体が重く朦朧とした感覚で、高熱があるという事だけはわかる。

なんとか部屋着に着替えて、必死で敷いた布団の上に体を横たえた。

仕事中はなんとか気力で耐えたけど、帰って横になると一気にしんどさが増した気がする。

今日はファミレスのバイトは休みだ。

大人しく寝ていよう。





熱い…。

ぼんやりと目を開いても、その先には暗闇が続いていた。

どれくらい眠っていたんだろう。

窓の外も、部屋の中も真っ暗だ。

リビングの明かりがドアの隙間から細く差し込んでいる。

ドア越しに電話の着信音が聞こえた。

順平はきっと私が部屋にいる事にも気付いていないんだろう。

リビングで電話に出た順平は、誰かと楽しそうに話している。

私とはあまり話してくれないのに。

一体誰と話しているんだろう?

「おー、その後どうだ?無事生まれたか?そうか、良かったじゃん。」

友達に子供が生まれたのかな。

「俺?ああ…ちょっと予定外の邪魔が入りそうになったんだけどな。…そう、あいつ意外とモテんだな。まぁなんとかうまくいった。…ハハッ、俺、意外と役者だからな。」

なんの事だろう。


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