季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
駅前のカフェで待ち合わせて、久しぶりに志穂と会った。

ランチを食べながら志穂の仕事の話を聞いて、食後のコーヒーを飲みながら、話は私の近況に移った。

志穂はコーヒーを一口飲んで、カップをソーサーの上に置いた。

「ごめんね、結婚式に出席できなくて。」

「ああ、うん。その事なんだけど…。」

志穂にはまだ壮介との事は話していない。

黙っておくわけにもいかないので、壮介との結婚が破談になった理由を話した。

志穂は何度か壮介に会った事があるので、かなり驚いたようだ。

取り立てて目立つわけでも特別男前でもない、平凡でどこにでもいそうな、あの壮介が?!と。

「まぁ、あれだね。結婚する前にわかって良かったんじゃない?」

「そう…なのかな…。」

「うん、結婚してから隠し子発覚!なんて事になるより絶対いいよ。」

「志穂が私の立場だったらどうしてた?」

「ん?とりあえず、相手の女を呼ぶね。それから二人並べて土下座させる。もちろん慰謝料も請求する。」

なかなか志穂らしい答えだ。

もしその場に志穂がいたら、きっと私の代わりにそうしていただろう。

「朱里はその女に会わなかったの?」

「会ったけど…。会ったと言うか、壮介に別れてくれって言われた次の日に、マンションに帰ったらいたの。壮介、デレデレしながらその女と一緒に料理なんかしてた。新しい部屋が見つかるまでここで一緒に暮らすから、部屋が決まったら早く出て行けって私に言ったんだよ。」

「最低ね…。私だったらキレて掴み掛かってるわ。」


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