強引なカレの甘い束縛



大原部長の奥様の薫さんは、とてもかわいらしい人だった。

身長は一五〇センチくらいで、華奢な体にゆったりとしたジーンズと淡いピンクのトレーナーがやたら大きく見える。

ビーチサンダルをぺたぺたと音を立てながら歩く姿も予想外。

笑うとえくぼができて、ポニーテールを揺らしている姿は幼くもある。

どちらかと言えばがっしりとした体型で荒々しい顔つきの大原部長とは雰囲気も何もかもが違っていて驚いた。

「場所と食材は提供するけど、私はお料理は苦手だから勝手に焼いて食べて飲んでね」

山盛りのとうもろこしを乗せたお皿を抱えて大きく笑う薫さんにどう答えればいいか躊躇していると、私の腰に手を回した陽太があっさりと彼女に近づいて声をかけた。

「せっかくのお休みの日なのにお邪魔してすみません」

軽く頭を下げる陽太につられて私も慌てて頭を下げた。

「いいのよ別に。うちの人の「ひとりごとを聞こう会」だっけ? あんなおじさんのひとりごとに意味があるなんて、会社って不思議よね。私は何もできないけど、みなさんで適当に楽しんでね」

「ありがとうございます。あ、えっと、こちらは今日初めての参加なんですけど」

陽太が私に視線を向け、小さく頷いた。

その優しい笑顔に促され、私は一歩前に進んだ。


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