強引なカレの甘い束縛



『マカロン』を出たあと、陽太は当然のように私の家に来た。

ひとり暮らしには広すぎる家には同期のみんながよく集まるけれど、一番この家に来ているのは陽太かもしれない。

大勢で来ることもあれば陽太ひとりで来ることもある。

これまでふたりきりでこの家にいても、とくに甘い雰囲気になることはなかったけれど、気持ちが通い合ってからは距離も言葉も空気も、何もかもが変わった。

これまで、ふたりでソファに並んで座りテレビを観たり、それぞれが本を読んだりパソコンを開いて仕事をしたり、触れそうで触れることのない距離の中過ごしていた。

仲がいいとはいえ、同期という枠を守り、遠慮にも似た気遣いの中で一緒にいたけれど。

今では同じことをするにしても、お互いの体温を感じるようになり、陽太の指先が私の体に触れることにも慣れてきた。

もちろん、照れくささと恥ずかしさがなくなることはない。

「この間買ったスウェットに着替える?」

「あ、その前に風呂に入りたいんだけど。俺、ためてくるよ」

「私が行くからいいよ。陽太はスーツをこのハンガーにかけておいて」

「ん。寝室にかけておいたらいいのか?」

「あ……。うん、そうだね」

〝寝室〟という言葉に一瞬口ごもった。




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