強引なカレの甘い束縛



安全な場所に落ち着いたあとも、公香は道路の真ん中で身動きが取れなくなった恐怖と、自分のせいで私たちに迷惑をかけたことへの反省で涙が止まらなかった。

出張がなくなり、たまたま家に帰っていた忍さんからの電話に事情を説明して迎えに来てもらったときも、公香は姉さんにしがみついて離れなかった。

車道を挟んだ向こう側で公香の名前を叫んでいた姉さんも、公香を抱きしめて離そうとせず、忍さんに支えられ歩きながらも決して公香の手を離さなかった。

姉さんも公香も怖い想いをしたばかりなのに、そうやって手をつなぎ寄り添えることがうれしいのか、時おり笑顔を浮かべながら、帰っていく。

陽太が結婚の挨拶のために音羽家に来る予定だったけれど、姉さん達はそれどころではなく、後日ということになった。

とはいえ、姉さんの「今更挨拶はいいから、早めに準備を進めなさい。もちろん、相談にはのるわよ」という言葉によって、陽太と私の結婚は了承された。

反対されることはないと思っていたけれど、結婚式や新居のことについては姉さんが取り仕切って決めていくだろうと覚悟していた。

だけど、それは杞憂に終わり、姉さんは私たちに任せてくれるようだ。

陽太のご両親の意見もあるだろうし、私たちだけですべてを決められるわけではないけれど、姉さんの言葉は思った以上に私の気持ちをラクにした。

「公香、うれしそうだな」

陽太と私は、帰っていく三人の後ろ姿を見ながらホッと息をついた。

公香と手をつなぐのは姉さんと忍さん。

公園に来た時と違ってそこに私はいないけど、親子三人で背を向け歩く姿は自然で、あるべき姿だと実感した。


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