甘いだけの恋なら自分でどうにかしている



『彼氏 連絡とれない 理由』

ウェブブラウザの検索窓にそう打ち込んでハッとする。

私、会社で何を調べようとしているんだ。

消そうとバックスペースキーに指を乗せると、背後から憎悪の塊のような視線を感じ、振り返ると課長が立っていた。

「小千谷(オヂヤ)」
「はいっ」

やましいことをしようとしていたせいか、まるで背中に物差しでも入れられたみたいにピンと伸びる。

「勉強会の資料は出来てるか?」
「あっ、はい。この間課長にアドバイス頂いた通り、事例のところを増やしました。確認お願いします」

私は製薬会社に営業として勤めている。

今週末、社内での勉強会が予定されていて、久しぶりに担当となった。

というのも入社八年目にして営業事務に一年程異動になり、今年の四月から営業に戻れたという経緯があるからで。

ファイルスタンドに置いていたA4サイズの資料を手渡すと、課長は顔をしかめた。
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